空飛びラボ日記 Ver.2

研究する人生

クローンの実現性

映画を観てから時々考えているのです。

クローンって考えているよりも相当難しいのじゃないか?ほとんど無理なんじゃないか?今出来ているもの(マウスとかウシとか)も突き詰めたらクローンじゃないんじゃないか?


クローン作製とか発生生物学は私の専門じゃないので、最先端知識がない上で言うのだけれども、妊娠中にマイクロキメリズムという現象が起きているらしいと言うことが分かってきていて(こっちはやや専門)、解析の難しい事象だから研究そのものはまだほとんど進んでいないのだけど、このマイクロキメリズムを考えるとクローンって無理じゃない?と思えるのでした。


マイクロキメリズムってのは、簡単に言うと「妊娠中に母親の細胞の一部が胎児に入り、胎児の細胞の一部が母親に入って、双方がキメラ(複合体)になる」ということです。
例えば、子供5人産んだお母さんの身体には5人分の細胞が混ざっているし、ついでにお母さんのお母さんの細胞も入っているっていう、、、、。
ちょっと怖い感じの話しでもありますね。
お母さん側から見ると、ひとり妊娠するたびにお母さんの組成が変わっていくんですよねー。母は強し、とは言いますが「キメラ率=強さ」なら(注意!個人的思いつきでテキトーです)子供を何人も産んだ肝っ玉母ちゃんは最強なわけです。元々自分の母親とキメラなので、それを1キメラ、とすると、3人産めば4キメラ、5人で6キメラ、どこぞの知事夫人のように7人だと8キメラ!
対して、オヤジは何人の子持ちなろうとも1キメラのままですから弱いの当たり前、、、w なんて。


実際は、入った細胞はごく少量なので、何をしているのかもよく分からないというのが現状です。
でもまぁ、結構重要なんじゃないか、ってこれは研究者の勘ですが。


マイクロキメリズムを考えると、代理出産なんか、確かに受精卵は遺伝学上の親のものであるけれど、妊娠中に代理母の細胞が胎児に入るわけですから、これでもしその少量の細胞がかなり重要な機能を持つ、なんてことになったら誰が産んだか、は相当重要な問題になってしまうわけです。

私は自分の専門への贔屓もあるのでしょうが、常々自分の仕事を通じて子宮がただの保育袋であるわけがないし、妊娠≠発生、という感覚を持っていたので、マイクロキメリズムを知った時は「やはり!」という感じで思わず拳を握りしめたのでありました。
(マイクロキメリズムの研究したいなぁ、、、、すぐは無理だろうけど、引退前の数年間でもやりたいな)


クローンに話しを戻しますと、自分の細胞から発生可能な卵細胞を作ったとして、自分の子宮で育てなければ、妊娠中に他者の細胞が混じるので、厳密にはもうひとりの自分にはなりません。
また、仮に自分の子宮で自分を育てたとしても、自分はそもそも自分と少量の母との複合体ですから、お腹にいる自分のクローンに自分の母親由来の少量の細胞が行くのか?というとよく分からない。行かなければ元の自分とはやっぱり少しだけ違う自分になるわけです。


遺伝的に均一なマウスなら可能?
今のところそういうことになっていますが、SNPという現象(遺伝子が同じでも一塩基だけ変わっちゃうという現象。ざっくりしすぎる説明で済みません)と、マイクロキメリズムを考えるとそれもどうなんだ?クローンっぽいってだけなんじゃない?という気がしなくもないです。



私のつたない知識を寄せ集めて考えると、クローンは

  • 人工子宮を用いて一代目を作る
  • 一代目の細胞を用いて、人工子宮で二代目を作る
  • 二代目は一代目のクローンと言える

という感じです。


私は、都合良いことにはウソがある、と考えるひねこびた性格なので、自分の分身を作って都合良く使おう、なんて考えが、研究が進むに連れて不可能であることが鮮明になってくると「ざまあみろ」なんて思ってニヤニヤしてしまいますが、それにしても、同じものは二ついらないんですね。自然の法則かも知れないですね。