空飛びラボ日記 Ver.2

研究する人生

映画 「宇宙兄弟」

またマンガが原作か、でも、宇宙ものが好きだし予告は悪くなかった(小栗旬の髪型はどうなの?)と思いつつ、観に行きましたが、かなり泣きました。

なんかねー、内容に感動したというよりは、自分が何年、、、、15歳の時からだから25年も抱えているある想いと向き合わされて、共感したり、懐かしかったり、まぁ色々と考えさせられて、気持ちも昂ぶったという感じです。

内容も、日本が作ったSF(と私は思っているんだけど)映画にしては悪くなかったです。
月面のシーンなど、映像技術の進歩はすごいですね〜。


で、これタイトル通り兄弟のお話です。ざっくり言うと、子供の頃の感動と約束を気持ちの中心に据えて夢に向かってまっすぐに歩いた弟と、途中色々考えているうちに感動と約束を忘れて妥協し、でも選んだ人生の中では精一杯やってきた兄との、もう一度あの頃の気持ちに戻って本当にやりたいことをやろう!という話。
映画の内容を詳しく書くのは好きじゃないので、この辺にするとして。


子供の頃の約束


観ながら思ったのは、自分がまだ「何者にでもなれる」時代の感動とか約束とかの強い想いを、忘れずにいられる人と、なんとなく見えなくなってしまう人が世の中にはいるのでは?ということでした。
映画では小栗君演ずる兄がそうですが、そういう人は次のように言います。「才能がないことに気付いた」「他にやりたいことが見つかった」「(諸事情が分かってくると)現実的じゃなかった」
もちろんその考えは一概に悪いとは決められませんし、新しい選択によって幸せな人生を作って行く人もたくさんいるに違いありません。

一方で、人生初期の強い感情をいつまでも鮮やかなまま持ち続け、それを原動力に、ほとんど愚直なまでの信念で進んでいく人もいます。そして実際に子供の頃の夢を叶える人、というのはいます。



私にも似たようなことがありました。
私の場合は兄弟ではなくて、当時好きだった同級生です。
中学の卒業式が済んだ後、受験により仕上げられなかった3学期の美術課題を仕上げるために、春休みの数日間美術室に通った私とK君は向かい合って木を削りながら様々な話をしました。
高校に入ればあっという間に大学を選ぶ時期が来るし、それまでよりはぐっと自分がなりたいものに近づいていきますよね。私も彼も理科好きだったので、サイエンスの話をたくさんして、私は生物の、彼は物理の研究者になりたい、きっとなろうね、頑張ろうね、と言い合ったものです。。。。

高校は別々でしたが、私たちは同じ公務員住宅に住んでいたのでごくたまに見かけましたし、話すこともありました。二人とも第二次ベビーブームの過酷な受験戦争に負けて浪人した時も、頑張ろうと言い合った記憶があります。

そして、私は獣医学部に、彼は工学部に進学しました。
私は随分彼のことを異性として好きだったけれど、それもいつしか消え、でも私の中にはずっと「あの時の約束」が生きていました。K君は同志だったのです。

私は特別優秀というわけではなかったので、獣医師になることはともかく、研究者になることを諦めかけたことや逃げ出そうとしたことが数え切れないくらいありますが、最後の最後で私を思いとどまらせたのは「でも、K君だってきっと頑張っているんだから。自分だけやめるわけに行かない」「K君と、あの頃の自分に顔向けできないような人生にするわけにはいかない」という想いでした。中学最後のきらきらした想い出の中で誓った言葉は私にはものすごく重く大切なものだったのです。


そして、なんとか研究者の入り口に立った頃、私は私がたった一人でこの厳しい世界に置き去りにされたこと、分野が違っていても相棒だったはずのK君は、とっくに降りていたことを噂で知りました。
寂しかったです。
彼が諦めた理由が、苦手な英語(!)がどうしてもクリアできなくて留年を重ねるうちに気持ちが萎えたらしいというのも、嘆息ものでした。。。。(そのくらい何とか頑張れよ。。。。)
ついでに、付き合っていた先輩と結婚して奥さんのご実家の家業(全く理系じゃない)を継ぐらしいよ、と聞いて熱が出ましたwww



残って課題をやらせてくれた美術の先生とは今でも仲がよいので、2-3年に一度お会いしますが、その度に「K君に会って一発殴りたい」と言っています 笑。先生は私が彼を好きだったことも、お互い研究者を目指して頑張っていたこともご存じなのです。
K君とは大学の1年か2年の頃に美術の先生が毎年開いていた個展で会ったきりです。お互い例年の個展には顔を出しているのですが、タイミングがずれて、双方の友人から近況を聞くのみです。


私は今でもK君を殴りたいです。あのとき夢中で夢を語り合った時間は、特別なものだったと思うから。多少の壁は突破して欲しかったです。

でもね、K君が降りたことを知り「あー自分はあの頃の約束にはもう支えて貰えないんだ」と思ってから、長いスランプ時期が続きましたが(理由はそれだけではないけど)、今は本当に自分だけの気持ちを推進力にしてやっています。
というか、「一人でもやるんだ」と強く思えるようになったのでスランプからも抜けたのかも知れません。だから、彼が降りてくれたから自立できたところもあるのかも、と今は思います。。。


でも、時々空想するんです。
映画で、宇宙飛行士になった兄が弟と共に月に降り立ち「俺たちやったな!」という風に顔を見合わせて笑うように、お互い研究者として一人前になった私とK君があの春休みのように夢中で語り合う、、、そんな人生はそれはそれは楽しかっただろうなって。。。。。
それを私から奪ったK君のことを私はやっぱり一度は殴らないと気が収まりません。もちろん、グーで!