空飛びラボ日記 Ver.2

研究する人生

映画  「アイアン・スカイ」

9/28鑑賞

セットに懲りすぎて制作費が足りなくなり、寄付を呼びかけたら日本円にして一億円を超える額が集まって出来上がったという作品。
設定の奇抜さと皮肉が効きすぎた内容は、好き嫌いが分かれるとは思いますが、私はかなりツボでした。ニヤニヤし通し。

第二次世界大戦で敗退したナチスドイツ軍が、実は月の裏側に逃れ、そこで帝国を築きながら地球への帰還と復讐に備えて着々と準備していた、という内容です。
で、ニヤニヤしたのは、偵察隊として地球に向かった若きエリート将校(野心有り)とその恋人で地球学者の女性幹部が、21世紀の享楽に冒されたアメリカにおいてはその硬派ぶり、几帳面さ、生真面目さがものすごく新鮮で、大統領選の選挙に利用されてしまうところ。
女性幹部がおそらく日々復唱していたであろうナチスの「勤勉!健全!健康!」というスローガンが、現代においては全く新しい思想に感じられるんですね。もの悲しいやら、笑えるやら。まさにトホホです。
他にも、国連会議での各国のエゴ丸出しの会話など、世界の警察を標榜するアメリカをおちょくりまくりで、会場からもかなりの笑い声が。一番大きな笑い声が起きたのは、月の裏側からついに地球に責めてきたドイツ軍の宇宙船について、どこの国のものだと互いに詮索し合っている時に、北朝鮮代表が「あれは我が国のもので、将軍様の指導により云々」と言い始めた時に、各国代表が「そりゃねーわ!ウソにも程があるわ!」と大笑いしたシーンでしょうか。


世の中、口当たりの良いことを言っていても、実際は裏ばかり、、、と知ってしまった大人が観る映画だと思います。
映画って、単純に感動して前向きの感情をもらうのも良いけど、心にポトンと毒を落としてくれるのもまた映画の良さだと思います。
だらだら長いドラマで後味が悪いとどっと疲れてしまうけど、二時間程度だから、それが効く。



実は映画を観た後で、職場の女の子が参加しているというのでミュージカル「A COMMON BEAT」を観に行ったんです。
タイトルから想像できるように、ものすごくざっくり説明すると「色んな文化があって、対立もするけれど、我々の心の底にはコモンビートがあるんだから手を取り合おう!」って内容です。
ミュージカルだけ観たらもっと感動したかも知れません。でも、アイアン・スカイを観て、人間の愚かさについて考えていたので、ある意味その正反対のものに接して、余計に考え込んでしまい、単純に「素晴らしかった!」とはなりませんでした。


欺き、愚行を繰り返すのも人間なら、それでも互いの違いを乗り越えようとして頑張ってみるのも人間。だから素晴らしいじゃないか、とは私には全く思えず 笑
本当に賢い生き物であれば、少なくとも過ちは一度だけで、学んで賢くなってくはずだと思うし、であれば、もっと共感しようよ!仲良くしようよ!なんて呼びかけは必要ないと思うからです。


愚かだから、それを正そうとする行動がある。ってことはやっぱり愚かなんだろ?って思っちゃうワタクシです  ( ̄ー ̄)ニヤ...

アイアン・スカイ : 作品情報 - 映画.com