空飛びラボ日記 Ver.2

研究する人生

受難のネコ、ミト

ご存じ、我が家にはミトというサビネコが居ます。
サビちゃんなのでメスであります。

このコはちょっと不思議なコで、この話しは何度か書いているからおなじみの人もいるかも知れないのだけど、また書きます。

それは2006年7月2日のこと。確か土曜日。
休日出勤で研究所に行っており、途中にわか雨が降って、やんだ頃を見計らって帰宅しました。
16時くらいだったかと思います。

当時私はエレベーター無しの5階建て団地の5階に住んでいました。
階段を上っていき4階から5階へ。
と、間の踊り場の角に小さな黒い塊が。さらに「ニャー」と声が。

迷彩ちっくなサビ柄ゆえに、どこか目なのか鼻なのかもよくわからない子猫でした。


団地(10棟くらいあり敷地も広かった)には住み着いている野良猫も何匹も居るようでしたので、この春生まれた子猫が迷い込んできたのでしょう。
それにしても5階まで上ってくるなんておかしな子猫だと思いましたが。

既に我が家には2匹のネコが暮らしていたので、わざわざノラちゃんを保護する気は無かったので、子猫に「あら~どこのコかな?お母さんのところに戻りなさいね」と声をかけて通り過ぎようとしたのですが私について階段を上ってきます。
そして、ドアに鍵を差し込もうとするとドア前にちょこんと座りました。


(こいつは部屋に入る気満々ではないか)


まあでもご飯でも食べさせてから外に出せば問題ないでしょうとドアを開けると、私よりも先に部屋へ。


(ちょ、ちょっと待ちなさいお嬢ちゃん!)

焦って追いかけるとなぜか風呂場に直行し、当時、家猫の水飲み場として風呂場に置いていた洗面器から水をごくごく飲んでいました。

(え?なんで知っているんだろう???)


不思議に思ってみていると喉を潤して一息ついたのか、平然と部屋に向かっていこうとするのでさすがに抱きかかえて阻止。
玄関に食事を用意してあげました。

がっつく子猫。

食事が終わって満足するとまたもや部屋に入ろうとしましたが、やんわりと押しとどめ外に連れ出しました。

「さぁさぁ、おかあさんを探しに行きましょう」

私が階段を降りると子猫はトコトコ付いてきます。
団地の中を歩いているうちにねぐらを思い出して帰るかも知れないと、適当に歩いておりました。


子猫は黙って私に付いて歩いていましたが、突然大きな声で「ニャー」と鳴き、私が足を止めるとものすごい勢いで私のジーパンを上ってきました。慌てて抱き上げるとそのまま喉を鳴らして腕の中で丸く、、、、そしてアクビ。
あっという間に眠ってしまいました。


初夏の夕暮れ、団地の片隅で完璧にくつろいでいる見知らぬ子猫を抱いて途方に暮れる人間ひとり。


(ええとこれは、、、押しかけ女房的なヤツなのか?)


子猫を抱いてとぼとぼと帰宅する私でした。


それがミトです。


先住ネコ達にも受け入れられて、とても元気に育っていきました。


ところがどうも避妊手術を済ませてしばらくした頃から頻繁に嘔吐するようになりました。
最初は毛玉かなと思っていたし(そのように診断もされた)、ラキサトーンなど潤滑剤を食べさせると嘔吐が減るような手応えもありました。
でもなんだか毛玉とか異食とかそういったことでは無いのでは?と感じるくらいに嘔吐が酷くなり、もう少し高度な検査が出来る病院に移り内視鏡検査と胃粘膜生検による病理検査も行いましたが、結局は原因不明。
ただ、胃粘膜組織の染色像からは詳細は不明だけど免疫応答の異常が起きているようでした。

それからはステロイドを使ってみたり、抗炎症剤を使ってみたり、低アレルゲンのフードにしたり、10年以上続いた嘔吐のコントロールに私もミトも苦労した日々でした。
ある処方を試しても、2週間程度は嘔吐を止められるのですが、かならず効かなくなってしまう。
その繰り返しで、随分と最新の文献を読んだり、自分なりに原因を探りましたね。


最終的に一番可能性があると考えたのは、炎症性腸疾患の上部消化器にのみ症状が出ているタイプ。
幸いと言って良いのかミトは下痢は全くと言って良いほど無く、おそらく腸は問題なし。
嘔吐のみでしたから、仮に食事の半分を吐いたとしても残りから栄養吸収でき、深刻な状態にはならなかったと思われます。

とはいえ、割といつもお腹をすかせていて、ガツガツ食べる割に細くて小さなネコですけどね。


5歳でもちっさい!お隣が平均より大きいってのもあるけどw


これは私が獣医師だから自分の責任において行ったことで、誰かに参考にして欲しくは無いのですが、長年の観察からおそらく免疫反応の問題だろうと結論づけて、5年ほど前からある薬(抗アレルギー剤)を試してみたんですね(容量は文献を読んで決めました)。
そしたらこれが当たりだったらしく、嘔吐しなくなったのです。
ほぼ毎日投薬は必要だったのですが、薬を飲ませていれば吐かない。これには本当に安堵しました。


最近吐かないの。平和よ。


話は変わりますが、一昨年の2020年。
相次いで2匹のネコが亡くなりました。2匹とも腎臓病で、1匹は約8ヶ月の闘病、もう1匹は発見からたったの1ヶ月でお別れでした。
自宅点滴と投薬だけならそこまで大変では無かったのですが、症状が重くなるにつれて強制給餌も必要になり、トイレまで行けなくてお漏らしをしてしまうことも毎日のようにあり、病気の子達が私のベッドで一緒に寝たがっていたこともあって夜中に寝具を取り替えたことも1度や2度ではありませんでした。
その頃になると、出勤前の時間だけでは2匹のケアが難しいため、ほぼ毎日昼休みに帰宅して点滴したりもしていました。
もちろん、ミトも含め元気なネコ達のお世話もしながらでしたけど、疲労もものすごいしきっと不十分でしたね。


8月と10月にそれぞれ亡くなって、私も数ヶ月ぶりに夜中に起きずに眠る日々を取り戻しました。
悲しさ、寂しさに少し慣れ、肉体的な疲れが抜けるのに半月ほどかかったような気がします。


ある日、ミトが随分痩せているなと気がつきました。
フードはあるのですがほとんど食べていなくて、でもものすごく飢えていて、どうしようもなくなって鍋に入っていた揚げ油を舐めようとしたりしていたんですね。
で、あわててとにかく何かしっかり食べられるものを、とドライフードでは無くて缶詰にしたり、肉や魚を茹でてみたりしました。
そしたらそういうものはよく食べるんです。

ミトも高齢になってきて、硬いフードはもう嫌なのかも知れないとその時は思いました。


なんかメッチャ弱ってる。。。


検査するべきだったと今は思います。
実はその頃急遽新しいポジションを得て、年内に転居することが決まり、仕事の引き継ぎと転居準備で猛烈に忙しく、色々後回しになったことは否めません。


そして2020年12月下旬。新居での生活スタート。
ミトの偏食は相変わらずですが、この頃不思議と薬は飲まなくても嘔吐しなくなっていました。それは今でも続いています。



新居でのミト


新生活にも慣れ、春が来て夏が過ぎ、いよいよ寒くなってきたなぁという2021年11月。
食欲が落ちて、かつ運動能力も落ちてヘロヘロになってしまいました。
さすがにこれは検査しないとまずいと病院に駆け込んだところ、甲状腺機能亢進症。
後出しじゃんけんですが、疑ってはいたんです。が。

甲状腺機能亢進症だけならまだしも、おそらくそれが原因での心不全、で胸水が大量にたまっていて崖っぷちでした。
主治医は処置中に亡くなることも想定して、冷や汗かきながらやっていたと思います。


ボロボロです。/アタシもうほんとにヤバかったんだからね!\

そして治療開始。
甲状腺ホルモンブロッカーと強心剤の併用です。
甲状腺の機能が落ち着く前に心臓停止が起きることが最大の懸念でした。
実際、短い間隔でまた胸水がたまってしまい、何度か抜いています。
主治医は正直「これはかなり厳しい」と思っていたでしょう(後日言われましたし)。

胸水を抜けば比較的元気になるので、食べて、ゆるゆる過ごしていましたが、甲状腺ホルモンの値がなかなか下がらない。
心臓も悪いままなので、生活の全てが負担になっています。そこで酸素濃縮装置を導入することを決めました。


こちらが装置。レンタルです。


ケージもレンタルできますが狭いので、キャットケージを覆って自作。

私が仕事に行っている間、かなり長い時間を酸素室で過ごしてもらうため、レンタルケージでは狭すぎるということで、自作しました。
というかプラダンで覆っただけですが、退屈しないように、ストレスが少なくなるように透明シートで窓も付けています。
中にはトイレとヒーターと加湿器も装備。

一日の大半をここで過ごすこと半月ほど。
あれ?なんか随分元気じゃない?


/すこしちょうしいいみたい\

一ヶ月後のホルモン検査時は胸水なし。
これには主治医も驚いていました。
これが1月上旬で、このとき膀胱炎になったので抗生物質を出してもらっていました。
膀胱炎はすぐに治るだろうから、この調子で甲状腺機能も平常に戻そう、そうすればまた元気な毎日を送れる!
ミトちゃん頑張った!
誰もがそう思いました。てか、私は思いました。


おひさまラブ。5歳のときの後ろ姿と比較すると随分(体重は半分に)痩せちゃった。


ミトは調子が良くなると酸素室も入りたくないようで、でもそれでも調子が良いので、早々にレンタル契約を終了できると喜んでいました(そこそこ高額なもので)。


ところが2月5日午後。
ミトいきなり絶不調。
朝はお腹すいた!と私を起こし、記憶にある限り昼間では時々フードを食べたりしていたのですが、夕方から飲水のみ。
翌日6日日曜日も絶食。
また胸水なのだろうか?それにしては呼吸は普通だが、、、胸水なら酸素室再開だから装置返却は先送りだなと考えつつ月曜日に病院に行きました。


そうしたら、


/じんうじんえんってニャに 涙\


腎盂腎炎だそうです。
だそうですって言うのは、私も獣医師なのを主治医も知っているので、最近はデータを見ながら二人で診断付けていることが多く(笑、治療費負けろ)、二人の総意として腎盂腎炎だろうという結論になったからです。

膀胱炎の原因菌を叩ききれず、尿管から腎臓に入ってしまったと思われます。

さぁまた大嫌いな抗生物質を飲まなくてはなりません。
点滴も必要ですが、心臓に負荷がかかるので様子を見ながらやります。

甲状腺、心臓、腎臓、そして肝臓もちょこっと悪い。
主治医はまた悲観モードですが、私はミトなら治療に反応できるのではないかと感じました。
出勤前に投薬3種類(間隔を開けないとダメ)、点滴、腎臓が悪いと老廃物が血管から除去されず、それが嘔吐中枢を刺激するので気持ちが悪くなる。それで自力で食べられないので強制給餌。
まぁ大変でしたけれども、抗生物質服用4日(2月10日)


/ちょっとお腹すいたみたい。自分で食べる\


やったー!
まだ全然本調子ではないんですが、投薬もまだまだ続きますが、上向いてきた感があります。


ミトは小さいですが生命力が強いと思います。
病気ばかりですけど、普段接していて病弱、儚いって感じではないんです。
今更ですが、ミトが私のところに来たのは病気になりやすい体質でも、なるべく長く生きて、遊んだり食べたりしたかったからなのかなって。

きっとそうだと思います。
これからも全力で支えたい。

随分長くなりましたので、これでおしまいにいたします。
ではまた