久しぶりの、おそらく20年ぶりくらいの山田詠美です。
こちらの本は何かの文学賞も取り随分話題になったそうですが、長らく彼女の小説から遠ざかっていたため知りませんでした。
今回、AmazonPrimeVideoでドラマ化されたので読んでみました。
この小説自体は2000年の発表らしいので、ちょうど私が彼女の小説を読まなくなった頃の作品のようです。
2000年に書かれた内容だと思えば、話題になったのも分かる気がします。
社会がどんどん貧しくなり、人の行動にも影響するような感染症が流行し、自分自身の恋愛関係を含む人間関係に対する考え方も10代20代30代の頃とは随分変わった今「大人の恋の全て」というキャプションが付いた小説を読んでもはーーーなんだか遠い、、、という感想が一番に来ます。
ただまぁ懐かしくはありました。
ポンちゃん(山田詠美さんのこと)、こういう感じね、と。
主人公(女性編集者)の若い婚外恋愛の相手の名前が「成生(なるお)」で、「成男」でも「成夫」でもないところがポンちゃんぽい、彼女が好きな名前だなと思いました。
また、成生の物わかりが良い態度、終始主人公に都合の良い素敵な若い恋人ととして描かれていて、本気で主人公に恋をして苦しんでいても決して主人公に決定的なダメージを与えるわけでは無い態度にポンちゃんの好みはブレないなーと感心しましたが、これが執筆されている時、作者の結婚生活は暗礁に乗り上げつつあり離婚に向けて(あるいは修復に向けて?)の闘争が行われていた、ということを頭に浮かべながら読むと、他人事ながら胃が痛くなるような思いもしました。
私はポンちゃんの小説だけでは無くエッセイも大好きだったのですが、そこから感じていたのは、男女関係において互いの心を自由にして束縛を感じさせないことが「極上の愛(この言葉好きそう)」だし「愛情に立脚した優しさ」と小説では描いていて、ポンちゃん自身もそれ実践すると同時にパートナーにはとても律儀な人であるようだ、ということでした。
が、実際に相手の心が自分から離れていったと分かったとき、その思いを貫くことが出来たのか?
外野には分かりませんけれど、離婚に向けては何年間かかかったらしいというのを何かで読みましたので(詳細不明)、もしかすると彼女の心は小説のようには行かなかったのかも知れないと思います。
または、小説を書きながら気持ちを整理していたのかも知れません。
A2Zの内容をポンちゃんの結婚生活と重ねるのは全くズレた話しなのかも知れませんが、小説の方は互いに婚外恋愛を楽しんでいた夫婦は、それなりに心に傷を負いつつも「結局戻るところはここしかない」「分かり合えるのはコイツしかいない」と言った感じで離婚はせず、共犯関係のような視線を交わして幕を閉じます。
読みながら、ポンちゃんも本当はこんな風に色々あっても元サヤに戻る、それが歴史を重ねた男と女というもの、となりたかったのかな?と思いました。
そのように読むと、(現実との対比で)なんとももの悲しい。
ニンゲンって本当はそんなに味わい深い生き物ではないもの、と溜息が出ました。
しかしながらそんなポンちゃんは2006年の離婚を経て2011年に随分年下の男性と再婚したようです。
本人に魅力があるのだろうし、関係性に絶望していないんだろうな。
人間の性質と、人間同士が作り出す関係性の両方に絶望し、基本的に期待もしていないところからスタートしている私のような人間とは全然違うのでしょう。
さてポンちゃんももう還暦過ぎました。
今、彼女が何を書きたいのかちょっと興味が出てきましたので、久しぶりに新しい作品を読んでみようと考えています。